80年代に一世を風靡したカルチャークラブのボーイ・ジョージが自らの半生を舞台化した大ヒット・ミュージカル『TABOO』。2002年、ロンドン、ウェストエンドの小劇場で幕を開けた『TABOO』は、評論家、観客それぞれから絶賛され、ブロードウェイでも大々的に上演され、2003年度オリヴィエ賞、2004年度トニー賞4部門ノミネートと大成功を収めました。
ボーイ・ジョージの半生を中心に、儚くも情熱的だった80年代ロンドンを彩るナンバーは、カルチャークラブの『DO YOU REALLY WANT TO HURT ME』『カーマは気まぐれ』のほか、マドンナ、ヒューマン・リーグ、スパンダーバレエなど、80'sサウンドが満載です。
これをまるごと収録したライブ映画が2005年末に日本でも公開されています。

この『TABOO』は、80年代音楽ファンやファッション・フリーク、ロンドンのクラブ・シーンを愛する人たちが泣いて喜ぶ作品というだけでなく、ゲイたちの生き様が色濃く反映された、レッキとしたゲイ映画です。
カルチャークラブのフロントマン、ボーイ・ジョージは、奇抜なメイクとファッションで注目を浴び、世界的ヒットを連発し、一躍スターダムにのしあがります。が、人々は常に、彼の音楽性よりもセクシュアリティや発言にしか注目せず、そんな状態に苦悩し、ついには薬物に溺れていきます。(ボーイ・ジョージは昨年5月まで、薬物使用のかどで逮捕・投獄されていました)
もう1人、とても重要なキャラクターが、ロンドンで「TABOO」という伝説のクラブを経営していたリー・バウリーです。「私はアート!」と語り、メイクやウィッグ(かつら)の概念をも脱構築し、ドラァグクイーンの(いや、ファッションの)歴史を塗り替えた伝説の天才クイーンで、今のレディ・ガガのように(いや、それ以上に)スゴイ…ドラァグを超えてるというか、これぞドラァグ!というか…超新星のような、異星人のような存在です。世界中で、多くの人たちがリー・バウリーに影響され、リスペクトを捧げています。
そのリー・バウリーを、少し太ってしまったボーイ・ジョージ本人が演じています。最初にハッテン・トイレから登場し、次々に奇抜なファッションで観客を驚かせ、最後、エイズに冒されて亡くなるシーンでは、いっさいのメイクを落とし、素顔をさらけ出します。本当にせつなくて、泣けるシーンです。
リー・バウリーの最期だけでなく、若き日のボーイ・ジョージ(ユアン・モートン)が、ゲイである自分の居場所はどこ?と切々と歌い上げるバラード「I am a stranger in this world」も、胸を打ちます。親との関係の難しさなど、ゲイだからこその様々なテーマも描かれていきます。
まさにアートと呼ぶほかはないリー・バウリーのファッションと生き様、スターから一気に転落していったボーイ・ジョージの苦悩…時代の寵児だったゲイたちのリアリティが、ゲイならではの奇抜すぎるカラフルさに彩られ、ロンドン・クラブ・シーンの光と影を織りなしていくのです。
劇場用映画ではなく、ミュージカル公演を映像に収めたライブ映画なので、お部屋でDVDで観るには最適です(ブロードウェイで観ようとしたら10万円以上かかるものがおうちで観れるわけですから、本当に幸せです)
80年代を駆け抜けたゲイの偉人たちの軌跡を、ぜひご覧ください。

<ストーリー>
1980年代、ロンドン。父親と衝突して家を飛び出した青年ビリーは、時代の最先端を行くクラブ「MUDD CLUB」オーナーのフィリップ・サロンに拾われ、ピンク色の髪をした女の子キムと、突飛なメイクとコスチュームで妖しい美しさを放つジョージのルームメイトになる。「MUDD CLUB」に毎夜集まるカラフルな面々の中でも抜群のルックスと歌声を誇るジョージは、新興のヴァージン・レコードと契約し、一躍ポップ・シーンのトップに躍り出る。
『TABOO』Taboo The Boy George Musical
2003年/イギリス/演出:クリストファー・レンショウ/作曲:ボーイ・ジョージ/作詞:ボーイ・ジョージ/衣装(デザイン):マイク・ニコルズ/振付:レス・チャイルド/出演:ボーイ・ジョージ、ユアン・モートン、ポール・ベイカー、ダイアン・ピルキントン、ルーク・エヴァンズ