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ココロのビタミン vol.2

ゲイテイストムービーガイド

DVD派のアナタに贈るゲイテイストムービーの特選ガイド。第2回目は、世界のゲイたちが泣き、「心のゲイ映画」に殿堂入りした『ブロークバックマウンテン』です。(Junchan)

第2回 永遠の心の名画『ブロークバックマウンテン』

 もう当然観た方も多いと思いますが、「もう一度観てみようかな」と思っていただければ幸いですし、まだの方はぜひ観てください!と強力プッシュしたい作品ですので、今回は『ブロークバックマウンテン』について書こうと思います。

 『ブロークバックマウンテン』は世界中のゲイたちにとって特別な意味を持つ作品だと言えます(全米のゲイのアンケートでも1位に輝いています)
 あの音楽を聴いただけでせつなさがこみあげてくる方も多いことでしょう。

 僕が最初に観たのは、公開直後の渋谷の映画館(激混み)でした。
 ラストシーンとエンドロールでちょっと泣いて、でも、後からじわーっときました。
 次に観たのは、夜中にケーブルテレビでたまたまやっていた時でした。
 号泣、でした。
 ゲイとして生きられること、愛する人といっしょに暮らせるということがどんなに幸せかということをかみしめました。

「俺はホモじゃない」と言っていたような二人が、ものすごい苦悩を内側に抱えて葛藤をしながらも、愛と呼ぶほかない感情に突き動かされ、一線を越えていく姿は、若い頃の僕そのものでした。でも、狭くてうす暗い部屋で初体験した僕と違って、ワイオミングの大自然(ブロークバックの山々)の中で過ごす二人は本当に美しいのです。
 イニス(ヒース・レジャー)の姿は、昔「俺はオネエ嫌い」と言っていた人が今はオネエで楽しそうに飲んでたり、昔「俺は二丁目嫌い」と言っていた人が二丁目で生き生きしてたりっていう、僕の彼氏や元彼のエピソードを思い起こさせました(僕がジャックだとか言うつもりは毛頭ありません。あんなに立派じゃないし)
 イニスとジャックは、僕らの幸せへの願いや闘いを先に生きて、身を挺して僕らを救ってくれているような、そんな気がしました。
 
 「あの山に行ってみたいな」と彼氏は言って、僕も「そうだね」と答えました。
 あのブロークバックの山は、二人の本当に束の間の幸せな記憶の象徴として、僕らの心の中に「希望」という名でずっと輝き続けるんだろうなと思います。
 
 いずれ、この物語のせつなさの意味を理解できないほど悩みなき世代も登場することでしょう。でも、僕は語り継ぎたいと思います。
 ゲイであることを周囲に理解してもらえないが故に味わう苦悩…誰もが多かれ少なかれ経験しているだろう悲しみを見事に表現し、カタストロフィーへと導く、本当に美しくてせつない物語として。


 世界中のゲイたちを涙させ、僕らの「心の恋人」であり、ヒーローともいうべき存在になっていたヒース・レジャーが、2008年1月、突然他界しました。
 多くのゲイたちがmixiやblogで「遠い存在のはずなのに、本当によくしてもらったような気がする」「ありがとうって感謝せずにはいられない」と書き綴り、哀悼の意を表しました。
 遺作の『ダークナイト』では、誌上稀に見る狂気のカリスマ悪役・ジョーカーを見事に演じ、その演技の振幅の広さで世界を震撼させました。
 『ブロークバックマウンテン』では同性愛者たちの言われなき汚辱への苦悩を体現し、『ダークナイト』では人々の心の奥底にある快楽や欲望や狂気を一身に引き受けたのです…まるで人間の罪を背負って磔にされたイエス・キリストのように。
 だから、ヒースは、誰かが言うようにジョーカーを演じるために悪魔に魂を売り渡したのでは決してなく、絶対に天国に召されたはずです。そう信じます。
 そして、僕らの心の中で、ヒースはずっと『ブロークバックマウンテン』のイニス(ある意味イエス)でありつづけるんだと思います。
 


ブロークバックマウンテン
2005/米/監督:アン・リー/原作:E・アニー・プルー/配給(日本):ワイズポリシー