<質問> 神様お願い さん
僕は約5年間、パートナーといっしょに暮らしていました。
二人とも親にも紹介し、家族ぐるみでおつきあいしていて、籍を入れられないこと以外はほぼ結婚と同じような生活でした。
ところが、彼には問題が…。何度も浮気を繰り返したのです。それだけでなく、浮気相手のことを本気で好きになったから「別れてくれ」と言い出され、僕は一緒に住んでいた家を追い出されました。その時彼は、慰謝料を払うこと、浮気相手とは当分の間は一緒に家で生活しないこと、などを約束しました。
でも、その約束はことごとく破られ、慰謝料も未だに払ってもらえません。
その後も何度か話し合いを持ちました。彼が土地の権利書を投げつけ、「好きにしろ!」ということもありました。でも、こじれる一方です。
このゴタゴタのせいで、僕は精神的に病んでしまい、帯状疱疹が出たり、自律神経がやられ、うつをわずらい、リストカットもしました。つらいことがフラッシュバックしてきたり、右手が震えてきて力が入らないため、仕事もあまりできない状態です。
今、僕の手元には、土地の権利書と『事実上結婚していました』『土地の権利書は自分で手渡したことを認めます』と書いた拇印と日付け入りの書面があります。あと委任書があれば全ての書類が揃い名義変更可能だと聞きました。が、委任書だけありません。あちらの親には「名義変更されるよりは、買い戻す」と言ってもらえてますので、その方向で解決したいと考えています。
早く清算して、彼のことを忘れたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
<回答>
まず、本件において最初に検討しなければならないのは、「パートナーに慰謝料支払責任が発生しているといえるのか?」だと思います。
この点について、男性同士では、法律上、一切貞操義務がありませんので、あなたが、パートナーの浮気により健康上の被害を受けたとしても、「浮気自体には」違法性がありませんので(行き過ぎた暴言や暴力があれば別ですが)、慰謝料支払責任が発生している事案ではないと思われます。
したがって、パートナーが「任意に」不動産の所有権譲渡に協力してくれれば(または慰謝料を払うのであれば)問題ありませんが、パートナーが任意に協力してくれない場合は、裁判で解決せざるをえなくなり、更に本件では、裁判で勝てる可能性は高いとはいえないでしょう。
なお、不動産の所有権移転手続には、権利書だけでなく、パートナーの印鑑証明書や、パートナーの実印を押印した委任状、不動産登記移転原因証書(代物弁済契約書等)が原則として必要です。それらが揃わなければ、すんなり登記手続は進みません。
また、税金のことも重要でしょう。慰謝料をもらう側は基本的に所得税を払う必要はありません。なぜなら、被害の回復を図ってもらっただけで「所得」を観念できないからです。しかし、不当に高額な場合、税務署から「贈与」とみなされるおそれがあると思います。ちなみに贈与税は年間合計110万円までは無税ですが、高額となる場合、かなりの贈与税が課税されることがあるので注意が必要です。
さらに、あなたが一旦取得した不動産を「親が買い戻す」とありますが、こうなれば、代金をもらったときに「譲渡所得税」がかかります。
この辺は、弁護士より税理士の範疇ですので、税理士さんにも相談されることをおすすめします。
ところで、あなたが不動産を取得する場合、パートナーが慰謝料支払をお金でできないので、物(不動産)で払ってもらったということであれば法律上「代物弁済」ということが登記移転原因となります。
ところが、前述のように、不動産の価格が不相当に高額な場合、税務署から不動産の所有権移転自体「贈与」とみなされる可能性もあると思います。
そのようなことも考慮に入れて、先方と交渉されるとよいでしょう。
結論 「お気持ちはお察ししますが、現状、先方に慰謝料を支払っていただく責任はありません…」
◆弁護士さんPROFILE
武藤健一(30代のゲイ)
東京弁護士会に所属するこの道ウン年の立派な弁護士さん。
以前『バディ』誌で法律相談の連載をしていたこともあります。
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