アメフト全米一を決めるスーパーボウルのTV中継は視聴率40%を超え、アメリカ人が最も熱狂するイベントですが、およそ1億人が広告を合計65回も見ることになるアメリカ最大のCMフェスティバルでもあります。
このスーパーボウルのCMをめぐり、様々なニュースが伝えられています。
まず、ゲイのための出会い系サイト「Mancrunch」(アメリカでNo.1の会員制ゲイサイトだそうです)のCM放送が拒否されました。CMはユニフォームを着た2人の男の子がTVでアメフトの試合を観ているシーンから始まります。興奮した1人がもう1人をこづき、「この野郎!」と叫んだり、典型的なアメフト観戦です。その後、ボウルに入ったチップスを取ろうとした2人の手が触れ、それから2人は見つめ合い…そしておもむろにキスを始め…。(なんてベタな…という感じですが、多くのファミリーが観ることを意識したのでしょう)
CBSに拒否されたCMはこちら
『ワシントンポスト』の「ストレートだって見れる」という記事では、このCMを「かわいい、楽しいCMだ」として、他のスーパーボウルのCMと同じようなもので、人種差別的でもなく、ごくごくありふれたノリなのに、いったいなぜ放送できないのか?と批判しています。
CBSのこのCMの放送禁止に対する説明は「スーパーボウル放送のためのCBSの基準に何か恣意的なものがあるわけではない」というシンプルなものでした。
「CBSが最後にスーパーボウルを放送した2007年には、ストレートの男性同士が(ギャグとして)間違ってキスをするというスニッカーズのCMが放送された。また、2004年にはジャネット・ジャクソンの乳首が全米に生中継された。それに比べてゲイのCMのいったい何が不快なのか? 危ない立場になることを承知で言うと、それはゲイのパートだ。我々はスーパーボウルを楽しむ時間がゲイによって中断されることに我慢がならないのだ。特に大きなスクリーンでそれが映し出されることに。それによって異性愛が壊れたりすることなどありえないのに」
一方、保守派キリスト教団体「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」が人工妊娠中絶反対を訴える初のCMを申し込み、こちらは採用されました。中絶の是非は、同性婚と並び、アメリカを二分する議論となっている、たいへん政治的にナーバスなテーマです。このCMの放送に対する抗議運動も起きました。
特に何かを主張しているわけでもないのにゲイが登場するCMは拒否され、明らかに政治的なCMでも保守派が喜ぶ内容であれば放送される…アメリカのある一面を象徴しているように思えます。
2009年にはNBCが、同性婚への支援を呼びかけるCMを拒否しています。ゲイやレズビアンのカップルとその子どもたちが登場し、ゲイやレズビアンが築く幸せな家庭のイメージを伝えるものです。
NBCは政治的、もしくは啓蒙的な広告を流したくないという意向により、ゲイ団体「Get To Know Us First. org」に対し、広告枠を提供することを拒否しました。が、実際には、ステロイド剤乱用防止を訴える団体「Dont Be An Asterisk. org」や、嫌煙団体「Tobacco Free CA」の広告などは放映されていました。
この「Get To Know Us First. org」の広告を監督したジーナ・レヴィは「同性婚は平等をめぐる人権問題であり、たまたまゲイに生まれついた人々だけでなく、異性愛者にとっても重大なトピック。私自身ストレートの女性だが、ゲイの家族がどんなふうかというのを人々に知らせるのはとても重要なことだと感じている。スーパーボウルの放映日にそれが実現しなかったのは恥ずべきこと」と怒りを表明。
ちなみにこの広告は、大統領就任式の中継時にもABCが放送を拒否しました。その後、GLAADおよび「Get To Know Us First. org」とが話し合いをもうけた結果、ゴールデンタイムに広告を放映することが認められたそうです。
昨年放送されなかったCMはこちら
それにしても、ゲイ団体やゲイ向け出会い系サイトが世界でいちばん高いCM枠を買い取ろうとする、その金銭感覚の違いにも驚かされます。
カリフォルニア州での同性婚禁止住民投票をめぐるキャンペーン合戦では、グーグルやアップルも同性婚賛成に十万ドルを寄付したように、賛成派、反対派ともに何千万ドルもの資金を投入していました。GLAADなどのゲイの権利擁護団体も百以上の企業から協賛を集め、有名人をたくさん呼んで大規模なイベントを開催しています。企業が(たとえ政治的と言われようと)人権に関する活動に積極的に協賛したり投資したりする、そうしたアメリカのバックグラウンドの違いをまざまざと見せつけられる思いです。
日本も今後、少しずつそういう方向に向かっていくでしょう。いつかゲイコミュニティがTVにCMを出す日も来るでしょう。まずはゲイコミュニティがもっとパワーを持つこと、でしょうね。
A Super Bowl ad too far? Straights can take it(The Washington Post)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/04/AR2010020403562.html
米キリスト教団体 「スーパーボウル」生中継で中絶反対CM放送へ(クリスチャントゥデイ)
http://www.christiantoday.co.jp/main/international-news-2713.html