ゲイやレズビアンの今置かれている状況をリアルに伝える『ハートをつなごう』は、単にリアリティを追求、というよりは、当事者の悩みにグッと寄り添い、真摯でサポーティブな気持ちで作られている印象を受けます。熱意がにじみ出ているのです。そこで、実際にこの番組の制作に携わっている今村さん(ディレクター)と宮田さん(プロデューサー)に、どういうスタンスでゲイやレズビアンの番組を作っているのか、番組収録後にお聞きしてみました。(インタビュー:後藤純一)

左:ディレクターの今村さん。渋谷が似合うイマドキな感性の方です。 右:プロデューサーの宮田さん。とても真面目で優しい方です。
――収録おつかれさまでした。今回はカナダで結婚式を挙げるレズビアンカップルと離島でがんばるゲイの方を取材されていましたね。僕から見ても「よくぞこの人たちを出してくれました! 拍手」と思いました。ディレクターさんの熱意とセンスみたいなところが素晴らしかった。
今村:すごいな、俺(笑)
宮田:ほめられるとけっこう喜びますよ。今も照れてます(笑)
――ゲイやレズビアンにとって、テレビに出るってけっこうハードルが高いこと。粘り強くコミュニケーションしていかないとなかなか…。なので、地道な努力が裏にあったかと思います。
今村:そんなでもないですよ~
宮田:メールをくれた人たちだし。そもそも伝えたいことがある。そういう意味では出演の動機があるわけです。
今村:僕ら、顔出しでなくてもいいと思ってるし、ハードルを低くしてるんです。「何でもいいんで話したいこと話してください」ってカメラを向けてると、自然といろんなことが出てきます。最初のハードルは低いんですけど、本人たちがハードルを上げていくんですよ。「離島に撮りに来てくださいよ」とか。そこは僕がどうってことじゃなく、本人たちのメッセージとか、伝えたい気持ちですね。
――なるほど~。そもそも、ゲイ&レズビアン特集をやろうと思ったきっかけ、経緯などを教えていただけますか?
今村:前に性同一性障害を特集してました、第3弾から僕が担当しているのですが、「同性愛も特集してください」というメールがちらほらき寄せられていて、やろうと思ってました。ネット上で「どうせ性同一性障害しかやらないんでしょ」みたいな声も読んで、「やりますよ」とか思ってて(笑)。で、テレビでどうしたらいいのかを考えてました。性同一性障害の方の場合は、性別を移行して見た目が変わるときの問題って目に見えやすいけど、ゲイ&レズビアンの問題の場合、どうやって映像にしたらいいのかと。彼らがどこに悩んでいるのかもよくわからなかったし。ちょうどその頃、『カミングアウトレターズ』を読んで、『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』も公開されて、こういう問題なんだなっていうのをつかんだ気がしました。こういう風に声を聞いていけばいいのかと。作れる、と思いました。で、『カミングアウトレターズ』の砂川秀樹さんにお話をして、やりましょうということになりました。
――今村さんが企画を上げて、実現したわけですね。
今村:初めのきっかけは視聴者の方ですけどね。
――今村さんは実際に身近にゲイやレズビアンのお友達はいたんですか?
今村:大学時代にいましたけど、そんなに親しくはなかったので、あまりイメージはなかったですね。社会人になってからは…いるんでしょうけど、僕の人格上の問題でカミングアウトしてくれない(笑)
――じゃあ、番組制作がスタートしてからたくさんのゲイやレズビアンに会ったと。その中で、どんな感想というか、イメージを持ちました?
今村:取材してみて、いろんな場面でギャップを感じました。わりと民放さんのテレビにも楽しい形で出ている人がいて、素晴らしいし、好きでした。でも、実際にいろんな人たちに取材していくと、意外とカミングアウトできないとか、受け入れられてないということがわかった。また、取材の過程で、当事者側ではなく(差別的な)理不尽なことがあって、「これは不公平ですよね」って言うと、「まあそういうもんですよね」と、慣れてたりする。「そんなに悩んでないですよ」っていうメールもきたり。そういう意味でのギャップがいろいろあった。多様だからこそですよね。
――アイダホを全部取材してビデオ編集した作品がウェブサイトに載ってましたが、ものすごくゲイやレズビアンに寄り添った、シンパシーを感じさせるもので、感動を覚えました。応援しようという、サポーティブな気持ちがあったかと思うのですが、どうでしょう?
今村:僕だけじゃなく、プロデューサーやWebディレクターも撮りに行ってるんですよ。応援しようという気持ちもなくはないけど、楽しく作りたいなと思っています。
宮田:あるレベルを超えて、寄り添いつつ、さらに突っ込んで取材をという熱意はありますね。
今村:楽しいんですよね。
――この番組って、何か困ったことがある人がいて、それを伝えて視聴者に共感をしてもらう番組だと思います。つらい話とか、苦しかった話とかが多い。それで楽しいっていう感想が予想外でした。
今村:もちろん、つらい話とか苦しい話を聞く。それで「そんなに悩んでないよ」とか言われてもそれも真実だと思うし。興味深いですね。今回は中村さんの住む離島に行って、牛とか猫とかが登場して、バカなこと言ったり、楽しかったですよ(笑)。友人から恋の話を聞いたら楽しいし、からかいたくなるし、そういう感覚。凌さんと美月さんのウエディングの話も、男女だと女性ばかり熱心で男性はもういいよみたいになりがちなのが、延々と「このドレスもかわいいね~」って二人で言い続ける。それが面白いと思いましたね。
――男女のカップルと違うからこそ楽しい、と。
宮田:いつも思うのは、先に何のテーマっていうのを決めたくないっていうのがあって、お話を伺ってると、生活の中で、昔の話もつらい話も今の幸せな話もあったりして。決めつけずに、脱線していきながら。答えはないんですけど、そういうふうにやってます。
今村:編集の現場ではけっこうくだらないこと言ってますよ。牛と猫はマストだよね、みたいな(笑)。でも、そこが中村さんが出てもらう意味だと思うし。
――そういうふうにゲイやレズビアンの人に接してきて、身近に感じたり、友達になったりしてきたと思いますが、もしご自分のお子さんがゲイやレズビアンだったら、どういうふうに接していきたいと思いますか?
今村:僕はまだ結婚もしてなくて、子どもっていうのが想像できないので、いつも周りに話してるエピソードを紹介しますね。僕は高校の頃から男子校で、恋人を親に紹介したこともなくて…田舎の母親なので、恋とかの話を全くしないんです。で、『ハートをつなごう』で今度こんな番組を作ったよってことを母親に毎回伝えてるんですけど、いつもだったらすぐ返事が来るのにゲイレズビアンのときは間があったんです。もしかしたら、僕のことはゲイかもしれないと思ったんでしょうね、そのあと、「番組を観ました。あなたも、好きになった人ができたら紹介してね、同性でも異性でもいいから」とメールが来たんです。大した親じゃないけど、見直しました。きっとそういう親御さんが多くなってくれるかなと思えました。
――なんていい話! 世の親御さんたちがそういうふうに変わってくれるきっかけになるでしょうね。本当に素晴らしいです。宮田さんはどうですか?
宮田:うちは中学生の男の子と小学生の女の子がいて。そろそろ好きな人が出てくる年ごろなんですけど、まだそういう話はしてこないですね。
――もし今後、息子さんが高校生になったとき、「実はゲイなんだ、お父さん」って言われるかもしれないと思うのですが…。
宮田:今は「そうか」と言えるし、言えるのがうれしい。この番組やってて、職場で身近な人がスタッフにカミングアウトしてくれたんです。みんなで飲みに行こうってなったりとか。そういうことがうれしかった。
――よかったです。僕もNHKで働いてる友達が何人かいるので、もっと言いやすくなったり、働きやすくなったらいいなとずっと思ってたんです。最後に全国のゲイ&レズビアンの人に何かひとことお願いします。
今村:メールください。わからないですから、僕らは。誰にもわからない、その人自身のことは。ゲイってこうだよね、レズビアンってこうだよねって、誰かに言われても、「そうとは限らないだろ」と思う。なので、メールをたくさんください。そうすれば、これからももっと多様な姿を見せられるし、ある意味偏見を崩せるだろうなと思います。
宮田:メールをください、ということに尽きますね。できるだけお目にかかって、反映させていきたいと思ってます。
――どうもありがとうございました。これからも番組を楽しみにしています!