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Special

青空の下でつながったハート~TOKYO Pride Festival (1)

藤嶋貴樹さんによるステージイベント・レポートをお送りします

5月23日、代々木公園イベント広場&野外ステージで第1回TOKYO Pride Festivalが開催されました。青空の下、約3500人もの人たちでにぎわい、思い思いに楽しめる素敵なお祭りになりました。このイベントの模様を2回に分けて送りします。1回目は藤嶋貴樹さんによる、ステージイベント・レポートです!

5月23日(土)、代々木公園イベント広場&野外ステージで第1回TOKYO Pride Festivalが開催されました。青空の下、約3500人(主催者発表)もの人たちで広場はにぎわい、ひさしぶりに会う友達とおしゃべりしたり、ブースでお買い物をしたり、思い思いに楽しめる素敵なお祭りになりました。ステージでは、NHK『ハートをつなごう』の協力で大きなスクリーンが設置され、たくさんの有名人の方やレズビアン&ゲイのミュージシャン、ブラス演奏、エイサーなどが繰り広げられました。
このTOKYO Pride Festivalの様子を、2回に分けてお送りしたいと思います。
1回目は、GAY LIFE JAPANで「GAY MUSIC WORLD」の連載をしてくださっている藤嶋貴樹さんによる、ステージイベントを中心としたレポートです。


エイズ予防のための戦略研究・MSM首都圏グループは「HIVを持ってる人もそうでない人も、ぼくらはもうすでにいっしょに生きている。We're already Living together」「誰もが暮らしやすい街ってどんな街だろう?」というメッセージを届けてくれました。

 5月23日(土)、東京・代々木公園のイベント広場&野外ステージを会場にして、第1回 TOKYO Pride Festival が開催されました。 当日はいったいどれくらいの数のかたが足を運んでくださるだろうかと、私はいささか心配していました。 しかし、いざ始まってみると、野外ステージ前のイベント広場には、実にたくさんのLGBTのみなさんの姿がありました。そして、いつパレードが出発してもおかしくないくらいの高揚した雰囲気が、そこにはあふれていました。
 確かに今回のイベントは、「パレードを開催するには準備期間が短すぎる」という判断に基づいたものなのかもしれませんが、だからといって、お手軽なものなどでは決してありませんでした。スタッフのみなさんのご苦労は、担当されている業務の内容によっては、かえってパレード開催の場合よりも大きかったはずです。 たとえば、今回のイベントは参加者のみなさんがパレードを歩くために会場を離れる時間帯が存在せず、あるいは Nagoya Lesbian & Gay Revolution のように会場が複数に分散しているわけでもなく、つまり、一般の参加者のみなさんの「物理的移動」というものがありません。したがって、スタッフのみなさん、特にステージ企画の運営のみなさんや救護班のみなさんなどは、朝から晩まで気を緩める暇がありません。仮に、今回のイベントが5月開催ではなく、真夏の8月に開催されていたとしたら、いったいどういうことになっていたでしょうか? ――スタッフのみなさんのご苦労と消耗は、おそらく今回の比ではなかったはずです。
 そこには、日本のLGBTコミュニティをもっともっと盛り上げていこうという、スタッフのみなさんの最大限の努力があったはずです。 5月23日の代々木公園イベント広場には、パレードの開催時と何ら変わらない、同じ性質の熱気があふれていました。だからこそ私は、TOKYO Pride の底力を見せていただいたという、そんなリスペクトの気持ちでいっぱいです。

 さて、それでは野外ステージで行なわれた企画の数々を、ご紹介していきたいと思います。

 オープニングは「Brass MIX!」。後述するエイサーの新虹(あらぬーじ)さんと並んで、ここ数年の東京のプライド・イベントでは、こうした吹奏楽の演奏がイベントの顔となっています。
 この「Brass MIX!」の撮影はプレス関係者には禁止されていたので、実際の様子を映像資料でお伝えできないことが心底残念なのですが、何よりも感銘を受けたのは、演奏に参加されていたみなさんが、本当に活き活きとした、素敵な笑顔をしていらっしゃったことです。今回の TOKYO Pride Festival のキャッチ・コピーである「みんなつながる」ことの楽しさ、素晴らしさを、この「Brass MIX!」や「みんなでブラス!!」の皆さんは、音楽を媒介にして、その身をもって私たちに示してくれました。個人的には、1984年のロサンゼルス・オリンピックのテーマ曲や、ゲイの新たな一般教養科目とも言うべき映画『ドリームガールズ』の同名テーマ曲の演奏が、ものすごくアガりました。

 続いては、TOKYO Pride 代表の砂川秀樹さんの司会進行によるトーク『つなぐ・つたえる・あらわす』。出演されたのは、LOVE PIECE CLUB 代表の北原みのりさん、ミュージシャンの笹野みちるさん、漫画家の竹内佐千子さんの御三方。 これは砂川さんもトークの中で言及されていたことなのですが、こうしたプライド・イベントのステージ企画では、どうしてもゲイ男子の出演者ばかりが前面に出がちです。なので、ゲイ女子の著名人である御三方がこうしてプライド・イベントのステージ企画で揃い踏みをされたのは、それだけでも十分に意義のあることだと思います。
 印象的だったのは、笹野さんと竹内さんのマス・メディア上におけるカミングアウトをめぐる、時代の状況の変化について。たとえ少しずつではあっても、時代は確実に良い方向に推移しているということを実感させてくれる、そんな内容のトーク・ショーでした。

左から北原みのりさん、笹野みちるさん、竹内佐千子さん

 そして午後からは、Living Together Concert。「エイズ予防のための戦略研究」と TOKYO Pride のコラボレーション企画であり、「全ての人がHIVとともに生きている」というリアリティーを共有することを目指したプロジェクト Living Together 計画のパーティである Living Together Lounge の野外ステージ篇です。
 出演したのはさん、響子さん、Soulit with SEKI-NE の3組。新進ゲイ・アーティストである SEKI-NE さんと共演した Soulit のメンバーのみなさんはストレートですが、とってもゲイ・フレンドリーなバンドで、これまでにもゲイ・ライヴ・イベントに頻繁に出演されている、素敵なバンドです。  
 今回の TOKYO Pride Festival ではNHK教育の福祉番組『ハートをつなごう』の公開収録も行なわれることになっていたので、ステージの中央には、これまでのゲイ・プライド・イベントでは全く考えられなかった巨大なモニターが据えられていました。そこに映し出された Living Together 計画からのメッセージ「HIVを持っている人もそうじゃない人も/ぼくらはもう一緒に生きている。/We're already living together.」をバックに、青空の下で歌う3組のアーティストのみなさんは、もう最ッッッッ高~~~~に、カッコ良かったです!!!!
 そして、LGBTミュージック・ウォッチャーである私の観点から特筆しておくべきことは、Soulit with SEKI-NE のパフォーマンスにおいて、ドラムセットが持ち込まれていた、という点ですね。代々木公園の野外ステージって、ドラムセットの持込みは原則として不可なんですよ。たとえメジャー・レーベルのアーティストであっても普通は許可が下りないし、過去の東京のプライド・イベントでも、ドラムセットはただの一度も使用できなかったんです。それが今回可能になったのは、やはり『ハートをつなごう』とのコラボレーション効果によるものだと思います。


左から灯さん、響子さん、SEKI-NEさん、Soulitさん

 続いては、これもまた近年の東京プライド・イベントの顔となっている「みんなでブラス!!」。全国のLGBTの吹奏楽ファンのみなさんが、事前に決められていた演奏曲や、それだけではなく初見曲も、イベント当日にぶっつけ本番で合わせるという、一見ムチャなようでいて、実はとっても感動的な企画です。 ぶっつけ本番だから、当然最初は演奏が噛み合っていません。しかし曲が進むにつれて、参加者のみなさんの呼吸が一つに溶け合っていくのが、ちゃんと音の形をとって、オーディエンスの耳と心に、はっきりと届いてくるんですね。「みんなでブラス!!」の素晴らしさとは、まさにそれなんです。全国から集まった吹奏楽ファンのみなさんが、演奏を通じて心を一つにしていく過程、言い換えれば「みんなつながる」という TOKYO Pride Festival の精神が、音という形をとって、プライド・イベントのステージ上でパフォーマンスされている、それこそが「みんなでブラス!!」の醍醐味なんです。今回の初見曲は、誰もが知ってる「銀河鉄道999」でした。

 そして、いよいよ始まったのが、NHK教育『ハートをつなごう』の公開収録です。あのラクダのオブジェも会場に持ち込まれ、代々木公園の野外ステージがいつものスタジオに早変わり。今や日本のLGBTの「同志」とも呼ぶべき存在となったソニンさんと作家の石田衣良さん、そしてLGBTの当事者代表として番組に出演されている杉山文野さん、野宮亜紀さん、上川あやさん、尾辻かな子さん、石川大我さんという、お馴染みのみなさんも登場。加えて今回は、ゲイであることをカミングアウトして芸能活動をされているタレントの前田健さんが、『ハートをつなごう』に初登場!
 私は以前からまえけんさんの大ファンだったので、こうしてまえけんさんがプライド・イベントに登場してくださったことが非常に嬉しかったし、日本のLGBTコミュニティにとっても一つのエポックだったと思います。 今回のイベントで収録された内容は、6月1日と2日の2回に渡って放映される予定なので、実際に会場に足を運べなかったみなさん(だけでなく、実際に生で収録をご覧になったみなさんも)、ぜひオンエアをお楽しみに!

 そして、その2回分の収録の合間には、エイサーの新虹(あらぬーじ)さんと、先述の Brass MIX!の2回目のパフォーマンスが行われました。新虹さんもまた、Brass MIX!や「みんなでブラス!!」同様、近年の東京のプライド・イベントの顔として大活躍しています。単にパフォーマンスを披露するだけでなく、聴衆も一緒になって踊ることが醍醐味のカチャーシーで、最後は大盛り上がり! この様子も、やっぱり写真でお伝えできないのがこれまた残念……!

 さて、ここで話は少し横道に逸れますが、私はこの日、ニューヨークからいらっしゃっていた、アメリカのオープンリー・ゲイ・ミュージシャンのダニー・カッツさんというかたをお迎えしていました。ダニーさんについては、後日改めて、「藤嶋貴樹のゲイミュージックワールド」で紹介させていただきたいと考えていますが、そのダニーさんは、この TOKYO Pride Festival と『ハートをつなごう』の収録を観て、「とっても日本的だ」とおっしゃっていました。もちろん、賛辞としてです。
  アメリカのゲイ・リブのあり方というのは、映画『MILK』を観れば明らかなように、マイノリティであるゲイが政治的・経済的に力をつけ、そのゲイ・パワーを異性愛社会にアピールすることによって、その歴史を積み重ねてきました。アメリカのプライド・フェスティバルも、原則的にはゲイ・パワーのアピールの場として成立しています。 対して、今回の TOKYO Pride Festival と『ハートをつなごう』は、市井に暮らすLGBTの一人ひとりのライフ・ヒストリーを丹念に積み重ねていくことによって成立しています。こうした一人ひとりのライフ・ヒストリーに立脚するというゲイ・リブのあり方は、日本のゲイ・リブの転換点となった伏見憲明さんの1991年の処女作『プライベート・ゲイ・ライフ』によって決定づけられたものですが、こうしたアプローチは、ダニーさんに言わせれば、アメリカのプライド・フェスティバルではまず考えられない、非常に日本的な切り口なんだそうです。 ごく平凡な一市民として生活しているLGBTのライフ・ヒストリーを、興味本位でもスキャンダラスにでもなく誠実に取材し、そして丁寧に積み重ねていくことによって、理解とシンパシーを人々のあいだに広げていく。そうした『ハートをつなごう』と TOKYO Pride Festival のあり方は、ニューヨークで育ってきたダニーさんの目には、とても新鮮で、感動的に映ったそうなんです。


  今回収録された『ハートをつなごう』の中身については、あんまり詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、今回のイベントのフィナーレを飾った、『ハートをつなごう』のナレーターであるオオヤユウスケさんのライヴ・パフォーマンスについてだけは、ぜひここで詳しく紹介させてください。 オオヤユウスケさんがインストゥルメンタル曲をパフォーマンスする後ろでは、先述の巨大なモニターに、これまで『ハートをつなごう』でオンエアされてきた一般のLGBTのみなさんのライフ・ヒストリーの映像や、当日会場で撮影されたメッセージVTRが流されていました。オオヤさんの演奏する曲は、それらの映像をよりエモーショナルに、ハートフルに伝えるための、非常に相乗効果の高いもので、さらにはソニンさんと前田健さんのお二人によるリーディングがそこに加わることで、観衆の一人ひとりの心を揺さぶる、涙なくしては観られない、感動的なステージとなっていました。 リーディングと音楽のコラボレーション。しかし、そのコラボレーションが観衆に伝えてくれた感動とは、それらの言葉の額面を超えたところにありました。 思わずしゃくり上げそうになった私が、涙をこらえようとしてふと横を見ると、隣でステージを観ていたダニーさんもまた、同じように泣いていらっしゃいました。住んでいる国や文化の違いをも超えた、普遍的な、人間的な感動を、オオヤユウスケさんとソニンさん、そして前田健さんのライヴ・パフォーマンスは、私たちのもとに運んできてくれた、ということなんです。 ダニーさんは別れ際、私にこんな言葉を残してくれました。「ニューヨークのプライド・フェスティバルに参加するよりも、こうして日本のプライド・フェスティバルに参加できたことのほうが、自分にとっては大きな意味があった。誘ってくれてありがとう」

  「やっぱりパレードがあったほうが良かった」、そんな声もチラホラと聞こえます。パレードを一度でも歩いたことのある人は、まだパレードを未体験の人に、あの感動をぜひ味わってもらいたい、そう思うでしょう。それは私も同感です。あるいは、これまでのプライド・イベントに比べて商業性が強かったように感じた人もあるかもしれません。しかし、私たちLGBTにとっていちばん大事なのは、それがパレードの形態であれフェスティバルの形態であれ、こうしたイベントの体験を共有することそれ自体にあるのではないでしょうか? イベントの形態が云々という以前に、そうした「体験の共有」こそが、今の私たちにいちばん欠けていることなのではないでしょうか? そして、自分でも何かLGBTコミュニティのために貢献したいと考えている人たちができることというのは、その時々での最善を尽くすこと、ただそれだけだと私は思います。そして TOKYO Pride のみなさんは、現時点での最善を尽くしてくださったと、私はそう感じています。
 みんなの心をつないでくれた素敵な1日を、本当にどうもありがとうございました!


ボランティアスタッフのみなさん、本当におつかれさまでした。そして、素敵な1日をありがとうございました!