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Special

L&G映画祭、盛況な幕開け

今年も新宿バルト9で素敵な週末を過ごすことができてシアワセでした

7月10日、第18回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が新宿バルト9で幕を開けました。オープニングはチケット完売の盛況っぷりで、上映前にはゴージャスなドラァグクイーンが登場し、華やかでした。10日から12日までの3日間、合計13本の長編作品が上映され、公式パーティも開催され、大勢のゲイたちが素敵な週末を過ごしました。

 7月10日、第18回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が新宿バルト9で幕を開けました。
 オープニング作品『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』はチケットがすべて完売し、大盛況のうちに幕を開けました。上映前にはゴージャスなドラァグクイーン、マーガレットさんとレイチェルさんが登場し、ファッションショー的なパフォーマンスを披露しました。続いて、代表の宮沢さんから挨拶があり、映画祭の歴史や、運営事情(すべてボランティアであり、フィルム代も高いため、決して黒字ではないということ)などが語られました。
 10日から12日までの3日間、新宿バルト9では合計13本の長編作品が上映され、10日の夜には二丁目のclub「ArcH」で公式パーティ「ル・グランバル」も開催され、大勢のゲイやレズビアンが素敵な週末を過ごしました。


アジアプレミアとなる『分断の街で』の上映前後には、コリア系アメリカ人監督ユン・スーさんのトークが行なわれました。


スペイン大使館が後援した『シェフズ・スペシャル』の上映前には、協賛しているセルバンテス文化センターの方の挨拶が行なわれました

 16日木曜日からは、青山のスパイラルホールで開催されます。
 今週見逃した方、チケットが買えなかった方などはぜひ、スパイラルでご覧ください。


公式サイト
http://tokyo-lgff.org/2009/index.html

映画祭特集2(青山スパイラルホール)
http://gaylife.co.jp/scene/794/1395/1399.html


バルト9上映作品レビュー

GAY LIFE JAPANの後藤がバルト9で観た作品をレビューでお伝えしたいと思います。すべてスパイラルでも上映されますので、観ようかどうか迷い中な方、今度の週末ヒマだなあという方などもぜひ、ご参考にしてください!


イングリッシュマン・イン・ニューヨーク
7月17日(金)21:25〜 @スパイラルホール

 初めてゲイの権利を訴えた英国の紳士的なゲイとして、その際立った個性がニューヨーカーに拍手で迎えられたクエンティン・クリスプ。名優ジョン・ハートの演技は、英国人らしい気品の高さを感じさせて素晴らしかったです。
 いちばんインパクト大だったのは、シンシア・ニクソン(SATCのミランダ)がドラァグクイーンみたいなメイクで登場するシーン。実験演劇を主宰する女優役で登場したのです。ミランダだけじゃなく、こんな役もできるのね!
 クリスプは1908年生まれなので、ゲイに対する社会の風当たりの強さは今とは比べ物になりませんでした。なので、クリスプがゲイとして生きていこうとするときの心構えや生き様、価値観などは、イマドキのゲイとは全く異なっています。女装して、固有の美意識の高さを誇り、人々を魅了するクリスプは、イメージとしては美輪さんに近い感じでした。
 「エイズなんて流行病よ(すぐにおさまるわ)」という発言で総すかんをくらったクリスプが、若い画家と知り合い、交流を深めていくエピソードがとても好きでした。彼は、自らの欲望を絵に表現し、孤独な魂を慰めています。クリスプは年老いた体に鞭打って、彼のためにできることをしたし、画家もそうでした。それはまぎれもなく、愛というべきものでした。



パトリックは1.5歳
7月19日(日)20:55〜 
@スパイラルホール

 本当にいい映画でした。あらゆる意味で素晴らしい作品でした。
 人と人とがいっしょに暮らしていくこと。愛し合いながら生きていくこと。その大変さと、大変だからこその喜び。葛藤を経て、理解しあい、絆を生んでいく。人間が生きる社会とはこういうものです。
 ゴランとスヴェンは、近所の人たちから平和な町に不意にやってきた闖入者のように扱われていましたが(ホモフォビアの直截さにはビックリしました)、映画は、このゲイカップルこそが模範的な家族であり、町の人々のほうが下劣で、子育てもまともにできていないということをだんだん示していきます。観客に「いったい、どっちが悪魔なの?」「暮らしやすい社会に貢献してるのは誰?」と問いかけます。まるで『ブロークバックマウンテン』のように。
 僕が泣いたのは、ラスト近く、お金持ちの家にもらわれていくかもしれないパトリックが、スヴェンからシャツを借り、出かける前にゴランの庭片付けを手伝い、指を切り、ゴランがその傷の手当てをする…というシーンでした。ゴランの表情は、世界中の母親とまったく同じ優しさ、聖母そのものでした。血のつながりはないのに、様々な苦労を経て、おたがいが自然に愛し合い、助け合うようになる、血が通い合うようになる…本当に素晴らしいシーンでした。宗教的な表現は皆無であるにも関わらず、「祝福」を感じました。
 役者も素晴らしいです。ゴラン役の俳優さんは、笑顔が本当に優しくて魅力的。スヴェン役の俳優さんは、本当にセクシー。そして、パトリック役の子は、若き日のリバー・フェニックスのようで、本当に美しい。北欧、恐るべし。
 映像も本当に美しいです。センスのよい町並みにやわらかい光がさしこんで、どのカットも本当に美しいです。
 僕らはまだ、養子どころか結婚もできません。そういう希望が持てる段階にも入っていません。なのですが、「これこそが幸せなんだ」と、「家族を持ってもいいんだ」と、僕ら自身がイメージできたと思います。
 やはりスウェーデンという国は、ずっと先のビジョンを示してくれたなあと思いました。
  「ゲイカップルが養子をもらい、育てること」というテーマがこれからもっとこの国でも語られるようになるでしょうが、その際に絶対に外すことができない、永遠のバイブルとなるべき作品だと思います。凡百の言葉より『パトリックは1.5歳』を観よ、です。ぜひ、DVD化を切望します。



アウトレイジ
7月18日(土)16:20〜 
 @スパイラルホール

 ドキュメンタリーとは、事実を通じて、社会のある部分に関する認識が新たにさせられる、ハッとさせる、そういう作品のことだと思いますが、これはものすごい強度でアメリカ社会に衝撃を与え、影響を及ぼすドキュメンタリー作品だと思います。ニューヨークのトライベッカ映画祭で話題になり、日本にもニュースが伝わってきただけのことはあります。
 あの人もゲイ、この人もゲイ、と暴くことが本意ではありません。そういうクローゼット(隠れホモ)議員が、バレるのを恐れるあまり、どれだけゲイたちを苦しめ、命を奪ってきたかという偽善(もはや犯罪に近いでしょう)を容赦なく暴くのです。
 そんなクローゼット議員について、共和党のゲイ団体のリーダーが「彼らは、カミングアウトするやつは弱いやつだと言う。堪え忍び続ける男らしさというのもある、と思っている」みたいなことを言ってたのが心底オドロキでした。そんな屁理屈がこの世にあるなんて!
 ポジティブな意味でのオドロキとしては、「ワシントンD.C.で働くゲイの数はサンフランシスコより多い。もしゲイの連邦機関職員を全員解雇したら首都の昨日は麻痺する」というコメントが印象的でした。
 政治用語や固有名詞が頻出するドキュメンタリーではありますが、膨大な数の人たちへのインタビュー映像、テレビのニュース番組、同性婚禁止キャンペーンの動画、CGなど、様々な映像によって立体的に構成され、退屈もせず、内容も恐ろしく(ある種ホラーですよね)、趣旨がものすごくはっきりと伝わってくる作品でした。
 これは下世話な視点かもしれませんが…。実際の政治家やクローゼット議員を暴く活動家(ブロガー、団体の人、ラジオのパーソナリティなど)へのインタビューや、議員の周囲にいた人たちの証言映像などを観ていて気づいたのは、カミングアウトしたゲイの活動家や議員のほうが断然セクシーで、クローゼット議員はいかにもノンケでございってな感じのダサさで全く魅力的ではないということです。当たり前かもしれませんが、自らの欲求に忠実に、ウソをつかずに生きるほうがシアワセですし、それは見た目にもにじみ出てくるんだなってしみじみ思いました。(先述の共和党ゲイ団体のリーダーなどは、典型的な野郎系マッチョで、きっとファンになる人続出です)



トゥルー・ラブ?
7月17日(金)19:05〜 @スパイラルホール

 笑える度+泣ける度の総合得点で評価すると、今回の映画祭のゲイ映画の中で最高得点間違いナシな1本だと思います。
 主人公はどこにでもいるような女の子トゥルー(TRUEと同じ発音です)。自分のことを「FAG HUG」と自虐し、ゲイ友達のために一肌脱ぐような彼女は、とても素敵なキャラクター。ルックスがちょっとケイティ・ペリーに似ていることもあり、大勢の人たちの共感を得るようなエンタメ作品になっていると思います。
 レズビアンカップルのママ2人とゲイカップルのパパ2人を持つトゥルーは、サンフランシスコから南カリフォルニアの田舎に引っ越してきます。アメフト部のマッチョたちは、いつも女をはべらせ、なよっとした男の子を「FAG(オカマ)」と罵ったり、ホモフォビアを露わにしています。カリフォルニアとのあまりの環境の違いに、トゥルーはがっかりしますが、唯一、黒人の男の子ローが友達になってくれます。しかし、彼はミュージカル好きで、セックスも求めてきません。パパたちもママたちも断言します「まちがいなくゲイね」(笑)。そして、ローを問いつめると、最初は激しく否定しますが、やがて、しぶしぶ、ゲイだと認めます。「そういう役回りは慣れてるわ」と苦笑しながら、トゥルーはローの恋人のフリに承諾しますが…
 ハラハラドキドキの展開もありながら、笑えて、ハッピーで、たっぷりの愛を感じて、最後はきっと泣けると思います!
 スポーツ界で活躍する黒人という、最もカミングアウトしづらい環境で揺れ動き、悩むロー。同じアメフト部の親友(マッチョなヒスパニック系のナイスガイ。超人的にセクシーです)は極度のホモフォーブなので、もしバレたら何を言われるかわかりません…もちろん家族もゲイを認めてくれません…。本当に厳しい環境だということがリアルに伝わってきます。でも、それをストレートの(過去に女の子が好きになったこともある)女の子が支える、というところがステキです。この作品には、「身近にゲイがいるストレート」がたくさん登場し、強い味方(アライ)として活躍します。ノンケと敵対するのではなく、味方につけていっしょに問題を解決していくことが大事、というメッセージも伝わってきました。
 でも、あれこれ考えず、とにかく、笑って、泣けて、思いっきり楽しめる作品です。オススメです!



シェフズ・スペシャル
7月16日(木)20:15〜 
@スパイラルホール

 期待通り、思いっきり笑わせてくれたスペイン映画でした。毎年感じますが、スペイン映画のコメディセンスは本当にピカイチ。よくもまあ、こんなに面白い作品を作れるものだと感心します。
 日頃はうっぷんを抱えている方も、この映画では腹を抱え、ストレスを笑い飛ばせることでしょう。
 そして、ちょい熊系のマキシや、イケメンサッカー選手オラシオの裸に「萌え」たい方も、ぜひご覧になってください。
 個人的には、いつも男に調子のいいことを言われて結局捨てられ、やけ酒に溺れたりしちゃうアレックスのキャラも大好物です。ゲイの親友で、いざというときマキシをしっかり助けてくれる、いちばんの味方なんですよね(とってもリアル)
 よく考えるとゲイがたくさん出るわけではありませんが、マキシのキャラが強烈なので、決して薄いとは感じません。
 何かしみじみ考えさせたりするようなメッセージ性は全くありませんが、ゲイが当たり前に暮らせる、シアワセになれる、あまつさえスポーツ選手がゲイとして生きられる(『トゥルー・ラブ?』と比べてみましょう)というだけでOKでしょう。なにしろスペインはカトリックの国で初めて同性婚が認められた国なのです。
 深く考えず、とにかく楽しく陽気(ゲイ)に観てください!



分断の街で
7月19日(日)11:45〜 @スパイラルホール

 首都エルサレムに高くそびえる壁。パレスチナ人のブーディは、警察に見つかって殺されないように注意しながら、夜中にこっそりと壁を越えます。ブーディはエルサレムで唯一のゲイの聖地「シュシャン」でショーをするドラァグクイーンです。「シュシャン」を始めたサアル・ナタネルは、エルサレム初のゲイの市会議員で、議会ではいつも宗教的なアンチ派とやりあっていました。
 壁が象徴する町の分断。それは、イスラエル人とパレスチナ人との同性愛カップルにとっても切実であり(まるでロミオとジュリエットのような…)、エルサレムがいかにゲイにとって住みづらくキビシイ状況であるかを浮き彫りにしたドキュメンタリーです。
 パレスチナ人はイスラム教徒ですから、まずゲイであることが宗教的に許されません。一方、イスラエル人は、ゲイであることにはまだ比較的寛容ですが、パレスチナ人とのつきあいを許さないのです。
 ゲイパレードで右翼に刺された経験を持つゲイのイスラエル人アダム(マッチョ系イケメン)は、「アラブ人がしかけてきた戦争だから、俺たちは入植地に住みつづける権利がある」と言います。そして、ゲイパレードに「紛争の終了を」といった別のテーマを持ち込むことに反対します。アダムの彼氏(クマ系)はパレスチナ人。二人は「結婚したい」と言います。が、彼氏の親は、認めてくれていません。
 キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、3つの宗教の聖地であるエルサレムでは、日頃は反目しあっているのに(戦争まで起こしているのに)反ゲイの一点で結託した超党派グループを結成し、ビラを撒きます。そこには「ゲイの殺し方」として火炎瓶などの作り方まで解説されていました…。サアル・ナタネルは、母親の元にまで「殺す」と脅迫電話がかかってくるようになり(それでも母は「息子が世界でいちばん大事」と細い腕をふるわせながら語るのです)、いよいよ厳しい状況に追い込まれていきます…
 日本ではあまりピンとこないテーマかもしれませんが、だからこそ、この機会にぜひ、観てみてください。同じアジアの東の端と西の端でこんなにも違うのか、とか、宗教って何なんだろう、とか、様々考えさせられると思います。