第4回 GLAP 観覧記
今回のゲイミュージックワールドは、先月の22日に新宿2丁目の Club ArcH にて開催されたゲイ&レズビアンのライヴ・イヴェント、GLAP についての話題です。
この GLAP という名称ですが、元来は「Gay & Lesbian Acoustic Party」の略です。2000年から2002年までの3年間、ゲイ&レズビアンのインディー・ミュージシャンたちが集うアコースティック・ライヴ・イヴェントとして、毎年12月に開催されていました。
この GLAP の発案者は、昨年の11月7日に37歳という若さで亡くなった、“がんすけ”こと春日亮二さんです。
春日さんが日本のゲイ・コミュニティに果たした貢献と功績は、ここですべてを語り尽くすことなど到底できませんが、LGBTミュージックの分野に限って言えば、それまでは個々に活動していた日本のLGBTミュージシャンたちにライヴ・イヴェントの開催を呼びかけ、のちにゲイ・インディーズと呼ばれるようになるLGBTミュージシャンのネットワークの基礎を作り上げたことが、第一に挙げられます。
春日さんは、黎明期のゲイ・インディーズ・ライヴ・イヴェントの多くに、深く関わっていたのです。
裏方としてだけではなく、春日さんは自らも genetic LOAD(後に genetic LOAD PROJECT に改名)というユニットを結成して、「ゲイであること」に常に大きくこだわった高水準の楽曲を、次々と発表していきました。それによって、春日さんはゲイ・アーティストの一つの規範を示すと共に、後続の登場も促し続けていたのです。
私は以前、Queer Music Experience.に genetic LOAD PROJECT の全ディスク・レヴューを書いています。そちらも参照してみてください。
genetic LOAD PROJECT 全ディスク・レヴュー
http://k-serv.homedns.org/QueerMusicExperience/disc_review/genelo.html
――そんな春日さんが肺炎で亡くなってから、一年という時間が経ちました。
一周忌を迎えるにあたり、春日さんが自ら企画した GLAP が、今回、追悼イヴェントとして装いも新たに復活した、というわけなんです。
それでは、今回の復活 GLAP について書き始める前に、先ずはこれまでの GLAP の歴史について、ざっと紹介させてください。
(※今回、諸事情により写真を準備できませんでした…申し訳ありません。そこで写真提供のご協力をNOBBYさんにお願い致しました。NOBBYさんありがとうございます! 編集部)
GLAP が初めて開催されたのは、2000年の12月15日です。
このころのゲイ・インディーズ・シーンは、打ち込み系の音楽が主流でした。これは打ち込み系が流行っていたというよりも、生演奏主体のミュージシャンが当時のゲイ・インディーズには少なかったという事情に拠ります。今でこそ、バンドや弾き語り系のミュージシャンはむしろ主流となっていますが、当時のゲイ・インディーズは全く逆の状況だったのです。
そうした状況に寂しさを覚えていたのが、現在でもシーンの第一線で活躍し続けている屋良朝友さんでした。
アコースティックのミュージシャンが少ない寂しさを、屋良さんが春日さんに吐露したところ、しばらくして春日さんが企画したのが、この GLAP だったのです。
「Gay & Lesbian Acoustic Party」という正式名称のとおり、春日さんが当初構想していたのは、あくまでも「パーティー」でした。つまり、それまでのLGBTライヴよりももっと小規模な、こじんまりとしたイヴェントを、彼は構想していたといいます。ところが、出演を希望するミュージシャンたちが数多かったことから、イヴェントの規模は当初の構想よりも大きなものとなりました。
当時のファン層からも、GLAP は大きな反響をもって迎えられました。当日の来場者数は、春日さんの予想を大きく超えるものでした。この第1回 GLAP は、新宿2丁目の第七天香ビルの地階に当時入っていたブルーオイスターラウンジで開催されたのですが、会場のキャパシティを大幅に超える来場者数があったために、会場に入ることすら叶わなかったお客さんも多くいらっしゃったほどの、すさまじい盛況ぶりだったのです。
このときの主な出演者の顔触れは、春日さん自身がソロで出演したほかには、今回の復活 GLAP にも出演している、GOLDEN ROSE のヴォーカリストの NOBBY さんがいらっしゃいます。genetic LOAD PROJECT のメンバーとコラボレートした一夜限りのスペシャル・ユニット genetic ROSE としての出演でした。また、前回の「ゲイミュージックワールド」でも紹介させていただいた sola さん。そしてトリを務めたのが、屋良朝友さんでした。
このときの詳しい様子は、Queer Music Experience.に当時の記事を現在でも掲載しています。そちらも併せて読んでいただければと思います。
GLAP2001
http://k-serv.homedns.org/QueerMusicExperience/live_review/2001_12_15.html
第2回は、翌2001年の12月7日に、会場を新宿2丁目のバー「九州男」さんに移して開催されました。オーガナイザーは、春日亮二さんから屋良朝友さんにバトンタッチしています。 このときの主な顔ぶれは、前回から引き続き屋良朝友さんと sola さんが出演しているほか、今回の復活 GLAP にはデュオ・ユニットのシャングリラとして出演している ab さんが、GLAP に初登場しています。 第2回の模様も、やはり Queer Music Experience.に当時の記事を掲載しているので、ぜひ読んでみてください。
GLAP2
http://k-serv.homedns.org/QueerMusicExperience/live_review/2002_12_07.html
そして第3回は、再び春日さんがオーガナイズを担当し、前回と同じく「九州男」さんを会場にして、2003年の12月6日に開催されました。
このときの主な顔ぶれは、屋良朝友さん、sola さん、そして ab さんが前回から引き続き出演しているほか、第1回 GLAP には genetic ROSE として出演していた NOBBY さんが再登場。また、前回の「ゲイミュージックワールド」でも紹介させていただいている大吾さんが、当時結成していたユニットの大吾yとして GLAP に初登場しています。さらに今回の復活 GLAP では裏方として多大な貢献を果たした kkjk さんも、この年には出演者としてパフォーマンスを行なっています。それまでは他のミュージシャンのバック・コーラスとして活動していた kkjk さんが初めて単独でパフォーマンスを行なったのが、この GLAP でした。
GLAP2
http://k-serv.homedns.org/QueerMusicExperience/live_review/2003_12_06.html
そして2008年の今年、春日亮二さんの追悼イヴェントとして復活を遂げた新 GLAP は、正式名称が「Gay Lesbian Action Packed」に変更されています。
つまり、アコースティックには必ずしもこだわっていません。
むしろ、打ち込み系のアーティストが、より多くフィーチャーされています。
その意味では、今回の GLAP は「復活 GLAP」というよりは、「新生 GLAP」と呼ぶべきものかもしれません。
GLAP の名を用いるのであれば、生前の春日さんの構想どおり、アコースティックにこだわるべきではないか? と感じたファンのかたもいらっしゃったことと思います。しかし、春日さんが GLAP を企画したのは、「打ち込み系が主体の(当時の)ゲイ・インディーズ・シーンに、もっと生演奏を」という、いわば「多様性」を求めてのことでした。
ということは、現在ではバンドやアコースティック系が主流となっているゲイ・インディーズ・シーンにおいて、ライヴ出演の機会が激減している打ち込み系のミュージシャンを中心にフィーチャーした今回の GLAP は、「ゲイ・インディーズにもっと多様性を」と願った春日さんの志を、より今日的な形で具現化したものだといえます。
今回の司会は、人気ドラァグ・クイーンのブルボンヌさんとジュヌヴィエーヴさん。このお二人は、1999年に春日さんが当時のパートナーのかたと挙式された際に、司会を務めたお二人でもあります。 そして、今回の出演者11組のうち、かつての GLAP にも出演したことのあるアーティストさんは、屋良朝友さん、NOBBY さん、大吾さん、ab さんの4組。このうち大吾さんは、体調を崩されたため、残念ながら出演がキャンセルになってしまいました。また、過去3回の GLAP にすべて出演し、GLAP とは最も縁の深いアーティストの1人である sola さんは、今回は同日開催の他のイヴェントへの出演があったため、これもまた残念ながら、出演は叶いませんでした。残る7組のみなさんは、いずれも GLAP には初出演です。
すべての出演者のかたが春日さんとゆかりがあるわけではないのですが、だからこそ今回の新生 GLAP は、春日さんがその発展に力を尽くしたゲイ・インディーズ・シーンの「これまで」と、春日さん亡き後の「これから」をつなぐ、新たな第一歩となったのではないかと思っています。
(※編集部より:春日さんの親友だったすなひでさんのパートナーである悠さんが、かわいいイラストで「GLAP」レポートを描いてくれています。そちらもぜひ、観てみてください。→blog「悠々自的」)
さて、ここからは新生 GLAP の実際の内容について書き進めていきますが、打ち込み系が中心ということで、電子音ばかりが強調されたピコピコしたパフォーマンスを想像されたかたも多いかと思います。
しかし、今回出演された打ち込み系のアーティストさんたちは、他のアコースティック系の共演者のかたたちと同様、「先ず歌がありき」のかたたちばかりでした。
音楽性の違いには関わりなく、どの出演者のかたたちも、先ず「歌」を大切にされていました。その点が、最も感銘を受けた点です。
今回の GLAP が正真正銘の初ライヴだった alis さんは、R&Bやダンスホール、ハウスなど、多彩なジャンルを自在に織り交ぜた、ダンス・ミュージックの総合商社のようなアーティストさんです。ヴィデオ・クリップやストリーミング番組の製作など、ヴィジュアル面にも大いに力を注いでいらっしゃるので、ライヴ・パフォーマンスでも視覚的な演出を予想していたのですが、今回のライヴでの alis さんは、何よりも「歌を聴かせること」に、最大限の力を注いでいました。
alis さんは、今回の GLAP 開催の1週間前に、通算3作目となるEP盤『EP Digital Flower』を新しくリリースしています。いずれのEP盤も、フル・アルバムと何ら変わらないヴォリュームを誇る力作で、寡作なアーティストさんが多いゲイ・インディーズの中にあって、実に充実したリリース活動を展開しているアーティストさんです。
だからこそ、かねてから alis さんのライヴを観てみたいと願っていたリスナーのかたも多かったことと思います。かく言う私も、その1人です。これからも、活発なライヴ活動を期待しています。
今回トップバッターで登場したマダム・ピロガネーゼさんも、ゲイ・インディーズのライヴ・イヴェントには初めての出演だそうですが、ライヴの実績自体は豊富で、既にさまざまなゲイ・ナイトや学園祭のイヴェントで活躍していらっしゃいます。
ピロガネーゼさんの楽曲とパフォーマンスは、女性アイドル・ポップス路線。これまでにもゲイ・インディーズには、女性アイドル・ポップス路線のアーティストさんが何組も登場してきました。今回の GLAP にも出演されている田中守さんも、この系統を代表するアーティストさんです。
それらのアーティストさんの楽曲は、そのほとんどが「既存の女性アイドルのパロディ」として成立しています。対して、ピロガネーゼさんの楽曲やヴィジュアル、パフォーマンスには、パロディの要素がそれほどありません。というのも、ピロガネーゼさんは「新人女性アイドルをゼロから構築する」というコンセプトのドラァグ・クイーンであり、ゆえにピロガネーゼさんのメイクや髪型には、ドラァグ・クイーンの大きな特色である「過剰さ」が希薄です。
つまり、マダム・ピロガネーゼさんは、男性であるという点以外は、すべてが「正統派女性アイドル」なのです。
これまでのゲイ・インディーズ・シーンには、こうした発想のアーティストさんはいらっしゃいませんでした。その意味で、マダム・ピロガネーゼさんはゲイ・インディーズ・シーンの「これから」を感じさせるお一人です。会場で販売されていたサード・シングル「乙女は胸キュン↑パイレーツ」、私もしっかりと購入させていただきました。(^^
一方、これまでのゲイ・インディーズ・シーンにおける女性アイドル・ポップス路線を牽引してきたのが、田中守さん。これまでにリリースしたCDのタイトル数は、ゲイ・インディーズではダントツ。ライヴ活動も活発で、シーンのトップ・ランナーのお一人です。
そんな田中さんも、GLAP には初出演。
司会のブルボンヌさんからは「男装なのに女装に見える」と突っ込まれていた田中さんですが(笑)、その言葉からもわかるとおり、田中守さんは「女装のアーティスト」ではありません。あくまでも、「女性アイドル・ポップス風味の楽曲を歌う、ゲイのアイドル」です。したがって、田中さんが歌う恋物語は、それが男性同士の恋愛であることが、常に明示されています。
GLAP の発案者である春日さんと田中さんでは、歌詞のテーマや楽曲のテイストが大きく異なっていますが、お二人とも「ゲイであること」に常にこだわった楽曲づくりを行なっている点は共通しています。その意味で田中守さんは、春日さんがゲイ・インディーズ・シーンに投影してきたその志を、現在でも引き継いでいるアーティストさんのお一人だと言えます。
全身汗だくになりながら、息も絶えだえに歌い踊りまくった田中さんのパフォーマンスからは、「歌って踊るのが大好き!」という「歌への愛情」が、ダダ漏れといってもいいほどのレヴェルで溢れ出していました。
2006年3月に解散を発表したユニット、Gmaru のメンバーだった Kamui さんと TOS さんのお2人も、それぞれソロ・アーティストとして、今回の GLAP に初出演。
Gmaru のラスト・シングル「a reason of being」は Kamui さん単独の自作曲で、ソロとなった現在でも引き続き、Kamui さんはこの曲を大切に歌い続けています。
既に7つのリミックスが存在している「a reason of being」ですが、今回は新たにクラブ・リミックスが登場。バスドラの重低音がドスドスと鳴り響くクラブ仕様のアレンジは、往々にしてヴォーカルをかき消してしまいがちですが、Kamui さんのヴォーカルはオケの重低音に負けることなく、言葉の一つひとつがきちんとオーディエンスの耳と心に届くものでした。やはり Kamui さんも「僕が聴かせたいのは先ず何よりも歌なんだ」という想いを強く抱いていることが伝わってくるパフォーマンスでした。
私は、Kamui さんと TOS さんのこれまでのライヴをすべて観てきているのですが、お二人とも、ライヴ経験を重ねるごとにヴォーカルの説得力と安定感が着実に増しているのが、私にはわかります。
特に TOS さんは、ライヴ・パフォーマーとしては必ずしも器用なかたではないのですが、しかし、だからこそ、歌の巧さに胡坐をかいた「適当さ」は、TOS さんのライヴ・パフォーマンスからは、微塵も感じられません。彼が1曲1曲に真心を込めて、常に全力を出し切って歌っていることは、彼のライヴを実際に観た人であれば、ひしひしと伝わってきたと思います。今回のパフォーマンスでは、「僕には歌を通じて伝えたいことがある、心から歌いたい歌がある」という TOS さんの真摯な想いが、歌声の中にきちんと表れ出ていたところが何よりも素晴らしく、そして感動的でした。ブラボー!
R&Bの影響が色濃いという点で、先に紹介した alis さんとは共通するところの多い KOJI さんのパフォーマンスもまた、先ず何よりも「歌を聴かせる」ことに集中したものでした。
KOJI さんの前回のライヴ出演は、前述の Kamui さんや TOS さんと同様、今年の5月に新宿 Future Nature Valve にて開催されたゲイ・インディーズ・ライヴ・イヴェント『ぼくらのタイニィショウ ~やっと会えたね~』となりますが、KOJI さんのヴォーカルの安定感もまた、前回を大きく上回るものでした。
KOJI さんが現状でリリースされている音源は、2002年7月に RAINBOW STARS RECORDS からリリースされたコンピレーション・アルバム『Rainbow Juice-orange-』の収録曲「Beautiful World」のみですが、今回のライヴでのMCによると、オリジナルの楽曲のストックは、なんと数百曲にも及ぶそうです。ぜひ、その豊富なストックを、ライヴでもCDでも、どんどん披露していただけたらと思います。
GLAP 初出演のアーティストさんの出番は前半に集中していましたが、イヴェントのほぼ折り返し地点でステージに登場されたのが、OTO-ZOU さんです。
OTO-ZOU さんも GLAP には初出演ですが、ゲイ・インディーズのライヴ・イヴェントへの出演経験自体は、今回 GLAP に初出演のアーティストのみなさんの中では最も豊富。司会のブルボンヌさんからも、「ヴェテラン」と紹介されていました。
そのブルボンヌさんのお言葉どおり、今回の OTO-ZOU さんのパフォーマンスは、実に貫禄たっぷりの、聴き応えのあるものでした。
九州を拠点としている OTO-ZOU さんの東京ライヴは、実は2002年の東京レズビアン&ゲイ・パレード前日祭 『GLORY』以来、6年ぶり。『GLORY』での OTO-ZOU さんのパフォーマンスはオケを使用したものでしたが、現在はピアノの弾き語りが中心。GLAP には初出演といいながら、今回の OTO-ZOU さんのパフォーマンスは、GLAP の「これまで」を強く継承するものだったといえます。
見事な鍵盤さばきと、圧倒的な声量。OTO-ZOU さんのオリジナル曲の中でも特に人気の高い「WARM HEART」のパフォーマンスは、まさに圧巻でした。ブラボー!
会場では、これまでの OTO-ZOU さんの集大成となるフル・アルバム『hotchpotch 001』が先行発売されていました。みなさんもぜひ、OTO-ZOU さんのアルバムを聴いてみてください。
過去の GLAP には二度出演されている ab さんは、今回は女性デュオ・ユニットのシャングリラとして出演。
これまでの GLAP での ab さんのパフォーマンスは、アコースティックというスタイルが ab さんの通常とは異なっているからこそ、逆にイヴェント性の高い、いずれも趣向を凝らしたものばかりでした。しかし、今回の新生 GLAP では、アコースティックという縛りがないからこそ、ab さん本来のダンサブルなパフォーマンスで観客を魅了してくれました。
以前とは異なるデュオ形態ではあるものの、ab with HGM 時代からのレパートリーである「恋のバカンス」も披露。春日さんが第一線で活躍していたころのゲイ・インディーズ・ライヴの雰囲気を、Club ArcH に蘇らせてくれました。
大吾さんの出演は急遽キャンセルとなってしまいましたが、その代わりに、以前大吾さんが組んでいたユニット・大吾yの片割れであり、さらには genetic LOAD PROJECT のピアニストとして、ゲイ・インディーズの黎明期から活躍されてきたゆぅさんが、春日さんのスナップ写真のスライドショーをバックに、genetic LOAD PROJECT のデビュー曲である「NO RAIN NO RAINBOW」のピアノ・インストゥルメンタル・ヴァージョンを披露してくれました。
急遽決まったパフォーマンスでしたが、これが春日さんの追悼イヴェントであるからには、ゆぅさんの出演は絶対に欠かせなかったはずで、こうしてゆぅさん単独のパフォーマンスが実現したことは、genetic LOAD PROJECT のファンだったみなさんにとっては、嬉しいサプライズだったと思います。
今回いちばん趣向を凝らしたステージングを披露してくれたのが、ゆぅさんに続いて登場した NOBBY さん。
今回は、genetic LOAD PROJECT のサポート・ピアニストとしても活動されていたべーすけさんと、前述のゆぅさんという、春日さんとは縁の深いお二人をゲストに迎え、genetic LOAD PROJECT のアルバム収録曲である「SUPER STRUCTURE」と、NOBBY さんのユニットである GOLDEN ROSE のセカンド・シングル「TOMORROW IS ANOTHER DAY」の2曲を、アコースティックで披露。ゆぅさんの「NO RAIN NO RAINBOW」同様、春日さんの追悼イヴェントという今回のライヴの趣旨を明快に示したパフォーマンスでした。
「TOMORROW IS ANOTHER DAY」のパフォーマンスでは、ピアノ伴奏のゆぅさんに加え、コーラスチームの BOOSTER がゲスト参加。壮麗なハーモニーを聴かせてくれました。
そして最後にパフォーマンスされた、GOLDEN ROSE のファースト・シングル「My Partner」では、GOLDEN ROSE のかつてのメンバーで現在は音楽活動から引退している SUSUMU さんが登場。一夜限りの GOLDEN ROSE 再結成ライヴともなりました。これには本当にビックリさせられました。このパフォーマンスではオケを併用。あえて当時のアレンジと振り付けで、かつての GOLDEN ROSE が得意としていたロック・オペラの雰囲気を再現してくれました。ブラボー!
そして、トリはもちろん、屋良朝友さん。
まずは「しつこいおかま」と「雲雀」の2曲を披露。この2曲は、日本のゲイ・インディーズの黎明期であった2000年から2002年にかけて特に集中して、数々のゲイ・ライヴ・イヴェントで屋良さんが歌われてきた曲です。どちらも日本のゲイ・インディーズ史に残る名曲です。
「雲雀」の歌詞の中には、「君とは違う空を飛ぶ」という一節があります。これというのは、どれだけ恋焦がれようとも決して叶うことのない恋の暗喩であり、これこそが、「雲雀」という曲が多くのゲイのリスナーの心を捉えた一因ですが、今回の屋良さんは、この一節に、春日さんへの追悼の思いを込められていたと思います。たくさんのオーディエンスが、この「雲雀」のパフォーマンスに涙しました。私もその一人です。
そして最後に歌われたのは、これもまたお馴染みのナンバー、「ありがとう」。わざわざ私が注釈を入れるまでもなく、今回の GLAP で歌われた「ありがとう」は、もちろん、春日さんに向けられたものです。日本のゲイ・インディーズの基礎を作り上げただけではなく、日本のゲイ・コミュニティ全体に多大なる貢献を果たした春日亮二への、感謝の歌です。
がんちゃん、本当にありがとう。 あなたの蒔いた種は、ちゃんと芽を吹いて、今もこうして育ち続けています。